げんぱつくん さよなら    

しろくまのデモ 

              


アレルギーのはなし
その2



※ 夏休みのはじめに
娘が アナフィラキシーショックを
起こしたときの 話です
すっかり 元気に なりました
長文です …




アイスクリーム 3さじで
娘っこは
アナフィラキシーショックを
おこしてしまった

幼稚園に 入って
娘の アレルギーは
ひどいらしいと
知った

隣で お友達が
バター入りのパンを
食べただけで
顔に じんましんが 出る

お弁当の時間に
ちょこちょこ 出た

時には お友達が
お家で 食べてきた
朝ごはんや お菓子に 反応して
じんましんが 出た

そんなこともあって
用心しちょったのに 私は
お店で 「 卵乳不使用」と
書いた 豆乳アイスクリームの
上の 普通のアイスを
間違えて 買ってしまった

いつも 決まった
シャーベットのような
アイスしか
食べられんから
喜ぶはず !
夏になったら
あれを 買おう!
と 冬から 楽しみにしちょった

そして うかれて
カップのふたにある
原材料表示を
見忘れた

いつもは スーパーで
原材料を ひとつ ひとつ
何度も 何度も にらむのに

「 アイス アイス ♪
たべよー たべよー ♪ 」
と 娘に 差し出した

クリーミーな
いちご味の アイスを
「 んん〜 おいしいねっ」
と 頬張った 娘っこ
でも なぜか
スプーンが 進まん

「はよ 食べんと とけるよ」
と ひとさじ すくって
食べさせて
はっと した

流しに 走り
フタを 見ると
「 牛乳 」
の文字が 飛び込む

娘の顔を 見ると
口のまわりが
すこし 赤くなり
コホンと 咳を した

咳は こわい
呼吸器に 炎症が
出た しるしで
ひどくなると
窒息に つながる

すぐに 119に 電話して
薬を 飲ませる
散髪に 出かけた夫に
電話して 帰ってきてもらう

そこまでで アイスを
口にして 5分ぐらい

娘は 吐き気が するのか
口や喉が チクチク するのか
私の あわてぶりに
怖くなったのか
「 だっこしてよ〜 」
と わんわん 泣いた

泣く子を 抱いて
救急車を 待つ時間は
長く長く 感じられた

大きな病院の
小児救急センターに 着くと
すぐに 点滴と 吸入で
薬を 身体に 入れる

2人の医師が
かかりっきりで 診てくれて
夫と 私は 背中を さすったり
手足を 握ったりした

口のまわりの 赤みと
ゴロゴロいう咳が あり
娘は 泣き続けたけれど
顔や身体の腫れは まだなく
前回のショックに 比べると
軽いように 見えた

初めての アナフィラキシー
だったら 家で 様子を みたり
自分の車で いつもの
小児科へ 行ったと 思う

症状は おさまるでもなく
悪くなるでもなく
しばらく 過ぎた

アイスを 食べてから
ちょうど 1時間たった頃
娘が 静かに 泣き止み
まぶたを 閉じだした

「 寝たらええね 寝んさいね 」
看護師さんが 言うて
一見 落ち着いたようにも 見えた

けど なにか おかしい
この子は 泣きながら
寝るような子じゃない
泣きたい時は もっと 泣ききる

すると 手足が
青白く 冷たくなり
医師が
「下がりよる! 下がりよる!」
と 緊迫した声で
もう 1人の医師に 叫ぶ
点滴に 急いで 薬が
足される

呼吸器が 腫れて
息が 苦しい上に
血管が ひらき 血流が 悪くなり
心臓の動きも 弱まって
酸素が 脳や手足に 送られなくなり
血中酸素濃度が 下がったのだと
後で 説明を 聞いた

ドラマの 危篤のシーンで
見るように 私達は
処置室の外に 出された

怖ろしい 幻の底に 落ちて
身動きが 取れず
ただ カーテンの向こうの
音に 耳を そばだてて
立つしかなかった

5分 経ったのか
20分 経ったのか
分からない

「 ぎゃあーっ 」
と 娘の声が した
「 やっと 泣けたね 」
と 医師の声

バタバタとした
気配が 少しずつ 治り
娘の泣き声も 止んで
私達は 処置室に
呼び戻された

ぐったりとして
うつろな目の 娘が
肩で 息を しよった

吐いたらしく
お昼のごはんの
匂いが した

ベッド脇に しゃがむと
じーっと こちらを 見て
医師の呼びかけには
目線を 向けた

冷たくて 青い 手足を
握って さすって
温めるぐらいしか
できることが ない

苦しそうに 顔を しかめて
手足を ごそごそ 動かした
「 動けるようになったね 」
医師の言葉に
良い徴候なのかと
ほっとする

呼吸が 少しずつ 落ち着いて
手足や 顔に 血色が 戻ると
こんどは 全身が
真っ赤に 腫れ始めた

「 腫れることも
できんかったんじゃね 」
医師の つぶやきは
今 思えば
私達を 安心させようと
説明してくれたもの
じゃったんかもしれん

このころから
先生たちの 緊迫感が
すこし ゆるんだ

でも 好奇心の固まりみたいな人が
じーっと 一言も しゃべらんから
不安に なった

それから しばらくして
娘は 手の甲に 刺さった
点滴の管を 不思議そうに 眺め
「 コレナニ? 」
と 微かな息で 言うた
声帯も 腫れて
声が 出んのらしい

だんだん
身体や顔の腫れが
ひき始めた頃
点滴の管に 流れ出た
血を しきりに 指差して
「 なにこれ? 」
「 あかいの なに? 」
「 ほーちんの ち? 」
「 ち なん? 」
と 声を 出し
興味深そうに
処置室の中を
眺めまわした

ああ いつもの
ほーちんが 戻ってきた

昼の1時に アイスを 食べ
もう 4時を 過ぎちょった

アナフィラキシーショックは
二峰性といって
また ショックを
起こすことが あるので
一晩 入院して 様子を
みることになった

救急センターから
小児科病棟へ
夫が 抱いて歩いた

ナースセンターの横の
かわいい処置室に 入り
家族3人になると
きゃいきゃい 笑って
おしゃべりを した

生きていてくれて 良かった
げんきに なってくれて 良かった
大切な 大切な ひとを 私が
殺すとこじゃった

おそろしい出来事と
いつもみたいな笑い声との
落差に 追いつけず
その晩は ずっと
こころが ガクガク
震えちょった

娘っこは 夕飯の 病院食を
「 おいしっ まだ 食べる! 」
と もりもり 食べ続け
いつもの倍以上ある
夕飯を ついに 完食し
看護師さんや 先生を
驚かせ 安心させた

「 今日は あーちゃんと
ここに 泊まるんよ
旅行みたいね
ベットに 寝るんよ
初めてじゃね 」
と 言うと
窓からの眺めや
柵の高いベッドも
それなりに 楽しみ
夜は ぐっすり 眠った

小さなベットに 2人で 並び
足や 手を くっつけて
体温を 確かめながら 私は
寝ては 覚め 寝ては 覚め
指に はさまれた
酸素濃度を 測る
クリップを 確認した

朝が 来ると 娘っこは
教育テレビの ラジオ体操に
合わせて ベットの上に 立ち
うれしげに 体操した







急な 入院で ベットが 空いていず
個室に 入ったので
のんびり ゆったりして
本当に 旅行に 来たような
朝じゃった

朝食のお膳に
デラウェアを みつけ
「 ぶどーっ ♪ ぶどーっ ♪ 」
と 喜んだので
「 今日は ぶどうから 食べて ええよ 」
と言うと ご機嫌で ぷちぷちやり
家から 持ってきた
お人形にも 食べさせた






忙しそうな 看護師さんに
「 ほーちんの おともだちの
なまえは レシオちゃん
って いうの 」
と お人形を 紹介した

ああ もう
まったく
いつも通りの
ほーちんじゃ

昨日の2人の先生たちが
ちょこちょこ のぞいて下さり
「 ごはん いっぱい 食べたし
帰れるね 」
と 退院許可が 出た

夫と 3人で
お昼ごはんに
うどんを 食べて 帰った

その晩に 熱を 出したけど
それからは 本当に 元気で
浴衣で お祭にも 行けたし
夏季保育の プールも 楽しみ
川で きゃいきゃい 遊んだ

でも 指しゃぶりや
服のすそ噛みを して
だっこや おんぶを
よく せがむから
やっぱり 相当
おそろしかったんじゃ

病院から 帰ってきて
2日目の朝
ふとんの上で
私が アイスクリームを
間違えて 買ったことを
説明し あらためて 謝った

「 こわかった ? 」
と 聞くと
「 だいじょうぶ 」
と 目を うるませて 言い
「 えらかった? 」
と 聞くと
「 えらかった 」
と 答えた

いや それは もう
謝って済まされるような
苦しさでは なかったのじゃ

私は ピストルの引き金に
手をかけて 暮らしよる
みたいじゃと 思った

毎日 3食
1つ 1つ
気を 引き締めて
注意せんと
おそろしいことになる

げんきに 戻ってくれて
本当に 良かった

全身の力が 抜けて
顔の右半分が ピリピリ 痛んだ

数日は 休養がてら
娘の 心のケアを しようと
家で ゆっくり
一緒に 遊んで 過ごした
声も 少し低く 穏やかに
スキンシップ 多めに
ゆったり ごろごろした

じゃが 娘っこが
ふと 言うたんじゃ
「 あーちゃん おちついて 」

えーーっ ?!
全部 ばれちょる
こりゃ だめじゃ
小者は 小者として
謙虚に 精進するしかない

アレルギーは 大変じゃ
それでも しぶとく
楽しみながら
3人で 一緒に
乗り越えて 行こう

半月経って やっと
平常心が 戻ってきた
( … 気が する )










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2017.08.12*-
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2017.10.14*-







 




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